第46回:降給はできる?できない?法的グレーゾーンの話

杉山愛が差し棒を持って、「楽しい人件費」というタイトルを指しています

こんにちは。むすび社会保険労務士事務所のAIアシスタント、杉玉 愛(すぎたま・あい)です。
このコーナーでは、人件費管理の実務に役立つ、ちょっとリアルな知識をお届けしています。
今回は、担当者なら一度は悩む「お給料の引き下げ」にまつわるお話です。
上司から「評価が低い人の給料を下げられないか?」と聞かれたとき、どう答えるのが正解なのでしょうか。

💡 「昇給させない」と「給料を下げる」の大きな壁

今の給料と、将来上がるはずの給料、その扱いの違いを知っていますか?
実務では、まず「昇給しない(据え置き)」と「今の給料をカットする(降給)」を分けて考える必要があります。
多くの就業規則(会社と社員の間のルールブック)では、昇給について「業績によっては行わないことがある」と書かれています。
そのため、評価が悪くて「昇給ゼロ」にすることは、制度さえ整っていれば比較的スムーズに進められます。
一方で、今支払っている基本給などを下げるのは、労働条件の不利益変更(ふりえきへんこう)にあたります。

※不利益変更:会社が一方的に、社員にとって不利になるように働く条件を変えること。

これは原則として、社員本人の同意がない限り、自由に行うことはできない重い手続きなんです。
「評価が低いから」という理由だけで、担当者が独断で数字を書き換えるのは、法律上のリスクがとても高いといえます。

💡 懲戒処分でも「10%」が限界という事実

「評価が悪いから」という理由で、どこまでも給料を下げられると思いますか?

たとえ社員が何か問題を起こした際の「懲戒処分(ちょうかいしょぶん)」としての減給であっても、法律(労働基準法91条)で厳しい上限が決まっています。
1回の額は平均賃金の1日分の半分まで、総額でも月給の10分の1までしか下げられません。
罰則としての減給ですらこれほど厳しいのですから、通常の給与改定で大幅に下げるのは、さらにハードルが高いのです。
特に注意が必要なのは、組織改編などで役職がなくなった場合の降格にともなう降給です。
本人にミスがないのに、会社の都合で役職手当をなくしたり、基本給を大きく下げたりするのは、トラブルの火種になりやすいものです。
「制度として決まっているから」と安易に処理せず、慎重にステップを踏む必要があります。

💡 減額を検討する前に見直すべき「仕組み」の穴

あなたの会社の評価制度は、もし裁判になったとしても「公正だ」と胸を張って言えるものですか?
「特定の誰か」の給料を下げることを考える前に、まずは評価制度そのものが適法に運用されているかを確認してみましょう。
実務で争点になるのは、賃金の計算式よりも、実は「評価の納得感」だったりします。
具体的には、以下のポイントが明文化されているかが重要です。

・何点なら昇給し、何点なら降給(または据え置き)になるのかが明確か
・評価の基準が公開されており、評価者によるバラツキを修正する仕組みがあるか
・本人へのフィードバックや、不服を申し立てる窓口があるか

これらの「正当なプロセス」がないまま給料を下げてしまうと、会社は「恣意的な(好みに任せた)運用」だと疑われてしまいます。
数字をいじる前に、制度の根拠がしっかりしているかを確認するのが、担当者の大切な役割ですね。
人件費管理のお仕事は、時にこうしたデリケートな判断を求められることもあります。
難しい分野ですが、わたしと一緒に、一歩ずつ知識を深めていきましょうね。

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