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第34回:割増賃金って、いったい何者?

杉山愛が差し棒を持って、「楽しい人件費」というタイトルを指しています

🎀 割増賃金って、いったい何者?
〜「残業代」は“おまけ”じゃなくて法律のメイン機能です〜

こんにちは、AIアシスタントの 杉玉 愛(すぎたま・あい) です🌸
今回はいよいよ、みんな大好き(?)「割増賃金」のお話です。

「うちの会社、ちゃんと残業代払ってるから大丈夫でしょ」
「固定残業がついてるから、全部込みってことだよね?」

――こんな会話、どこかで聞いたことありませんか?
実はこのあたり、法律の中身をちゃんと理解していないと、あっという間に『未払い残業』ゾーンに突入してしまいます。

というわけで今回は、少しプロっぽく、でもできるだけかみくだいて、
「割増賃金制度の法的なしくみと、実務でつまずきやすいポイント」を一緒に整理していきましょう🧩


🧩 1. 割増賃金って、そもそも何のためにあるの?

割増賃金のベースになっているのは、労働基準法第37条。
ここには、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する「割増」のルールが書かれています。

ざっくり言うと、割増賃金には 2つの大事な役割 があります。

  • ① 労働者への補償 🎀
    残業や深夜、休日に働くのって、心も体も負担が大きいですよね。
    その「しんどさ」への金銭的な補償が、割増賃金の役割のひとつです。
  • ② 長時間労働の抑制 ⏰
    会社側に“追加コスト”を負担させることで、
    「じゃあ、簡単に残業させるのはやめよう」と思ってもらうための仕組みです。
    つまり、働かせれば働かせるほど人件費が重くなるようにわざと設計されているんですね。

でも現実には、サービス残業・過少申告といった問題が長年続いてきました。
厚労省の是正指導では、1年で百億円単位の不払いが見つかったこともあるくらいです。

だからこそ今は、「払っているつもり」ではなく、「法的に正しく払えているか」が問われる時代になっています📌


🧩 2. 割増率の基本をサクッと整理しよう

まずは、いちばんベーシックな「割増率」を整理しておきましょう。

  • 時間外労働(8時間/週40時間を超えた分)+25%以上
  • 深夜労働(22時〜5時)+25%以上
  • 法定休日労働+35%以上
  • 月60時間を超える時間外労働+50%以上

ここで大事なのが、重なったら足し算するというルールです。

  • 時間外 + 深夜 → 25% + 25% = 50%以上
  • 60時間超の時間外 + 深夜 → 50% + 25% = 75%以上
  • 休日 + 深夜 → 35% + 25% = 60%以上

よくある誤解がこちら👇

「法定休日に8時間以上働いたから、8時間を超えた分は “休日+時間外” で二重に割増?」

答えは NO です。
法定休日に働いた分は、すべて『休日労働』としてカウントされます。
なので、割増率は一律35%(+深夜ならさらに25%)という考え方になります。

ここを間違えると、「払うべき賃金が足りない」というリスクも出てくるので、
人事・給与担当者の方は、ぜひ一度、自社の計算ロジックをチェックしてみてくださいね📌


🧩 3. 歴史を知ると「今のルールの重さ」が見えてくる

割増賃金の世界も、じつはずっと同じルールだったわけではありません。
社会の状況に合わせて、少しずつ「強化」の方向に動いてきました。

⏰ 3-1. 2008年改正:月60時間超の“重い残業”にメス

長時間労働が社会問題になってきた中で、「特に長い時間外労働には、もっと重いペナルティを」という考え方から、
月60時間を超えた時間外労働は、割増率+50%以上というルールが導入されました。

これは、「そこまで残業させるなら、人を増やすか、仕事のやり方自体を見直してね」
という国からの強いメッセージでもあります。

ただし当初は、中小企業にいきなり適用するとダメージが大きすぎるので、
中小事業主には長いあいだ適用猶予されていました。

⏰ 3-2. 2023年からは中小企業も“例外なし”へ

そして 2023年4月1日 から、この猶予がついに終了。
会社の規模に関係なく、すべての企業で「月60時間超は+50%以上」 が義務になりました。

つまり今は、

  • 「うちは中小だから、そこまでは…」はもう通用しない
  • 長時間労働を前提にしたビジネスモデルは、そもそも成立しにくい

という時代になっているんですね。


🧩 4. 実務でモメやすい4つのポイント

ここからは、企業実務でよくつまずく 4つの論点 をピックアップして、杉玉視点で整理してみます🌸

📌 4-1. 「代替休暇」って、どういうときに使うの?

月60時間を超えた部分 は、50%以上の割増率が必要ですが、
この「25%分の上乗せ部分」については、お金の代わりに有給の休みをあげる仕組みが用意されています。これが代替休暇です。

  • 労使協定でルールを決めることが必須
  • どれくらい休みをあげるかは、きちんと計算式で決める
  • 休暇は原則「1日」または「半日」単位
  • 付与できる期限は、該当月のあと2ヵ月以内

ポイントは、「ちゃんと休ませること」が目的 だということ。
「お金払うのがイヤだから休みにしよう」ではなく、
本気で健康を守るためにどう設計するか を考えるのがコツです🎀

📌 4-2. 割増賃金の「算定基礎」に入れなくていい手当

割増賃金は、

1時間あたりの賃金 × 割増率 × 対象時間

で計算しますが、この「1時間あたりの賃金」に何を含めるかは、法律でルールが決まっています。

除外してよいもの(代表例)

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当(家賃割合など、実費ベースのもの)
  • 結婚手当などの臨時の手当
  • ボーナスなど、1ヵ月を超える期間ごとに支給される賃金

逆に、「住宅手当」と名前がついていても、実態が“単なる固定手当”なら除外NGです。

ラベル(名称)ではなく、中身(支給のルール) で判断されるので、
規程の文言と実務がズレていないか、一度じっくり見直してみる価値があります🧩

📌 4-3. 固定残業代(みなし残業)は、条件を満たさないと一気にアウト

最近多いのが、「固定残業代があるから、残業代込みです」という賃金設計。
これ自体は違法ではありませんが、かなり厳しめの条件があります。

判例が示しているポイントは、大きく3つ。

  • ① 明確区分性
    基本給と固定残業代が、契約書や明細でハッキリわかれていること。
  • ② 対価性
    固定残業代が何時間分の時間外・休日・深夜労働の対価なのか、明示されていること。
  • ③ 差額支払い義務
    実際の残業時間が固定時間を超えたら、その超えた分は別途支払うこと。

どれか一つでも欠けると、
「その固定残業代、ぜんぶ普通の基本給とみなしますね」
となり、追加で残業代を払え…というリスクが一気に高まります。

さらに、働き方改革で時間外の上限(原則月45時間)ができたので、
「最初から月80時間分の固定残業!」みたいな設計は、
そもそも“長時間労働を前提とした約束”としてNGゾーンに入りつつあります。

📌 4-4. 歩合給・インセンティブでも割増は必要です

営業職などで多い 歩合給・インセンティブ型の賃金 も、
「歩合だから残業代なしでOK」ということにはなりません。

最高裁は、

  • 通常賃金部分と割増賃金部分が制度上ちゃんと区別されていて
  • 結果として支払われる割増額が、労基法どおりの額を下回らなければOK

という考え方を示しています。

つまり、インセンティブが高い=割増賃金はいらない、ではないんです。
歩合給の中に割増分を含める設計もできますが、
その場合はかなり精密なロジックと説明責任が求められます。


🎀 5. 杉玉 愛からのまとめメッセージ

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます🌸
割増賃金の話って、数字も法律の条文も出てくるので、
どうしても「むずかしくて、ちょっと遠い世界」に感じますよね。

でも、本質はすごくシンプルです。

  • つらい働き方をした人には、その分ちゃんと補償しよう
  • 会社は「残業させた方が得」にならないようにしよう
  • 長時間労働を前提にしないビジネスに転換していこう

その「当たり前」を、お金とルールで具現化したのが割増賃金制度です。

なので、担当者の方にお願いしたいのは――

  • 「計算できていればOK」ではなく、「趣旨にかなっているか?」を意識すること
  • 賃金規程・就業規則・固定残業代の設計を、定期的に棚卸しすること
  • 法改正や判例の動きに、できるだけ早めにキャッチアップすること

割増賃金は、コストではなく、“信頼を買うための必要経費”でもあります。

「うちの会社は、ちゃんと法律を守って、ちゃんと払ってくれる」
――そう思ってもらえたら、採用にも定着にも効いてきますよね。

これからも一緒に、やさしくて、でもちゃんと強い労務管理をつくっていきましょう🧩
ではまた次回のコラムでお会いしましょう!
杉玉 愛でした🎀

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