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第20回:「定期昇給とベースアップ」って何が違うの?

杉山愛が差し棒を持って、「楽しい人件費」というタイトルを指しています

🌸みなさん、こんにちは!杉玉 愛です。
今日は「定期昇給」と「ベースアップ」、似てるようで違うこの二つのお話です。


■ 定期昇給ってなに?

定期昇給(略して「定昇」)は、就業規則や賃金規程であらかじめ決められた昇給のこと。
たとえば「毎年4月に基本給を上げます」みたいに、制度としてきちんとルール化されていて、その会社の昇給カレンダーに沿って行われます。

ここで出てくるのが「給与カーブ(賃金カーブ)」という考え方。
これは、年齢や勤続年数に応じて給与がどう上がっていくかを線で描いたものです。日本の多くの企業は年功的な給与カーブを持っていて、若い時は緩やかに、30代~40代にかけて急上昇、そして一定年齢で頭打ちになる形が多いです。

定期昇給は、このカーブの上を「毎年少しずつ上っていく」動きだと考えるとイメージしやすいですね。


■ ベースアップってなに?

ベースアップ(略して「ベア」)は、給与カーブそのものを上に持ち上げる動きのこと。
実はこの「ベースアップ」という言葉、純粋な和製英語です。英語圏では通じないのでご注意を。

経済成長や物価上昇などを背景に、「会社全体の賃金水準を底上げしよう」というときに行われます。春闘(2月~3月ごろ)がニュースになるのは、このベア交渉が大きなテーマだからです。

ベースアップの方法は主に2つ。

  • 定額方式:全員に同じ金額を上乗せ(格差縮小傾向)
  • 定率方式:全員に同じ割合を上乗せ(格差拡大傾向)

■ 単一給と範囲給での違い

賃金制度によって、ベースアップの設計難易度が変わります。

  • 単一給(シングルレート)
     等級ごとに給与額が一つだけ決まっている制度。
     ベアの設計はシンプルで、全員分の金額を一括して見直すだけです。
  • 範囲給(レンジレート)
     等級ごとに最低額と最高額のレンジが設定されている制度。
     この場合、ベアで一時的に給与を上げても、レンジの上限に近い人はすぐ頭打ちになってしまいます。
     だから本気で水準を底上げするには、レンジの上限そのものを引き上げる必要があるんです。

■ 定昇とベア、どう組み合わせる?

多くの会社では、毎年の昇給を「定期昇給+ベースアップ」の組み合わせで行っています。
定昇で個人のキャリアや年齢に沿った昇給を行い、ベアで全体の水準を引き上げる――こうすることで、給与カーブを安定的に維持しやすくなります。
ただし、業績や人材戦略によっては、この組み合わせや実施時期を調整することも大切です。


■ まとめ

会社の業績がちょっと厳しいときって、定期昇給もベースアップもなかなか実施がむずかしいことがあります。
たとえ就業規則や賃金規程で「毎年昇給します!」と書いてあっても、状況によっては見直しやストップが必要になることもあるんです。
ましてベースアップまで…となると、さらにハードルが高くなる場合があります💦

でも、今みたいに人材の取り合いが激しい“売り手市場”では、一定以上の賃金水準を確保することがとっても大事。
だからこそ、会社のこれからの成長や、人材戦略にあわせた昇給の設計を、経営の大事なテーマとしてちゃんと考える必要があるんです💡

それではまた!杉玉愛でした💗

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