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第2回「原則と例外」の考え方

こんにちは。杉玉 愛(すぎたま・あい)の「法学部出身じゃない人のための、やさしい労働法教室」の第2回目です。
今日は、労働法の世界を理解するうえでとても大切な「原則と例外」の考え方、そしてその大原則のひとつである「ノーワーク・ノーペイの原則」についてお話しします。

自然科学と法律のちがい

たとえば、物理や化学の「法則」って、例外がないことが前提ですよね?
「重力の法則」なんて、地球にいる限りいつでもどこでも同じように働きます。
でも、法律の「原則」はちょっと違います。
人間が作ったルールなので、必ずしもいつも同じにはならないんです。
法律の世界では、まず「原則(ルールの基本形)」があって、そこから事情に応じた「例外」を設ける構造になっています。

労働法の大原則「ノーワーク・ノーペイ」

労働法でとても重要な原則のひとつが「ノーワーク・ノーペイの原則」です。
これは、「働かなければ、その分の給料は発生しない」ということ。
ちょっと意地悪な言い方に聞こえるかもしれませんが、民法や労働契約法にもとづいた、正当な考え方なんです。

でも、原則だけでは守れない

この「ノーワーク・ノーペイ」の原則だけで、働く人すべてを守ろうとすると、ちょっと無理が出てきます。
だって、病気やけがで働けなかったら…?
子どもが生まれて育児に専念したいときは…?
大雪で出社できなかったときは…?
そんなときまで「働かなかったから、はい給料ゼロね」では、安心して働けませんよね。

例外の登場です

法律では、そんな不測の事態や社会的な事情に配慮して、「例外」が設けられています。
たとえば、こんなものがあります。
・【年次有給休暇】
働いていない日でも、法律で「賃金を支払うこと」が定められています。 これはまさに、ノーワーク・ノーペイの原則からの例外です。
・【休業手当】
会社の都合で休業になった場合、使用者は労働者に「平均賃金の60%以上」を支払う義務があります。 これも、原則からの明確な例外です。

例外じゃないけど、守る仕組み

中には、賃金は出ないけれど、別の制度でカバーされるものもあります。
例外規定とはちょっと違うけれど、労働者を守る大切な仕組みです。
・【育児休業給付金】
育児中で働いていない間は、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。 会社が給料を払うのではなく、社会保険制度が支える形です。
・【傷病手当金】
 私傷病で仕事を休んだ場合、会社から給料が出ないときでも、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
 連続する3日間の待期期間を経て、4日目から1年6か月の間、一定の条件のもとで賃金の約3分の2が支給される仕組みです。

まとめ:原則と例外を意識しよう

法律を読むときは、まず「原則は何か?」を見つけること。
そのうえで、「どんな例外があるのか?」を探すクセをつけると、理解がぐっと深まります。
これは、会社の就業規則を読むときにも、そして自分で規則を作るときにも、とても大切な視点です。
「ノーワーク・ノーペイ」は労働法の土台です。
でも、それだけでは守れないから、例外がある。
この構造を知っておくだけで、労働法がぐっと親しみやすくなりますよ。

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